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       「未来の教室」、GIGAスクール構想、5G、電磁波  田中正治

 

GIGAスクール、「未来の教室」プロジェクト、EdTech、STEAMといった耳慣れない言葉が教育の現場で飛び交っているようだ。

 

1)「未来の教室」プロジェクトとは? https://www.learning-innovation.go.jp/about/

安倍政権がコロナ休校を宣言した翌日の2020年2月28日、経済産業省が学校休業の対策として「未来の教室」プロジェクトを開始、EdTech資本によるコンテンツの無料配信をWeb上で開始し始めた。文部科学省ではなく、経済産業省がいち早く学校教育に関するプロジェクトを開始したところが味噌だ。元来、経済産業省は民間教育が縄張りで、 文部科学省が学校教育が管轄であるのに対して、経済産業省が全面的に学校教育に関与しだしたのだ。

 

EdTech(エドテック)とは、教育」(Education)と技術 (Technology)を組み合わせた造語で、教育領域にイノベーションを起こすビジネス、サービス、スタートアップ企業などの総称だ。教育に参入していかに産業界に貢献するか、資本に利益をもたらすかという本音が垣間見える。

https://persol-tech-s.co.jp/hatalabo/it_engineer/516.html (EdTech)

 

次に「未来の教室」プロジェクトを実体化させるために、以前からの国策である「GIGAスクール構想」を前倒しして、4月7日政府はそのための補正予算2292億円を決定した。コロナ危機をチャンスとして加速させている。

 

2)GIGAスクール構想とは? 

https://www.mext.go.jp/content/20200625-mxt_syoto01-000003278_1.pdf

GIGAスクール構想の「GIGA」は,Global and Innovation Gateway for Allの略語である。「すべての人々のためにグローバルで創造性に富んだ道を用意すること」というような意味だ。「校内LANの整備」「学習者それぞれに1台PC」「学習と校務のクラウド化」「ICTの活用」を初等教育と中等教育の現場で実践し、ICT(情報通信技術)を生かして「全ての子どもたちが自分の特性に適した創造性を育む教育を実現すること」が一番の目的するというのが「GIGAスクール構想」。

この「GIGAスクール構想」の本音は、2019年6月に経産省が公開した 「『未来の教室』とEdTech研究会 第2次提言」で透けて見える。提言冒頭は「日本の産業はかつての国際競争力を喪失した。平成初期には日本企業が上位を独占していた世界の企業時価総額ランキングにおいても、日本企業はその上位から姿を消した。行政、ビジネス、医療その他社会の諸分野の変革で世界をリードしようと、Society5.0の実現が謳われている。しかし、国内の社会システムの転換、社会の意識変革、そして新しい社会に対応した人材育成が追いついているとは言い難い」という。つまり資本の国際競争力を喪失しているので国際競争力を復活させるためには、Society5.0に対応した人材育成教育が急務とされている。https://www.tkg-jp.com/tkg_movie/detail.html?id=2828  (Society5.0)

ここでは教育の目的が資本の国際競争に対応でき、Society5.0に対応できる人材(労働力)の育成にされている。人類が歴史的に蓄積してきた過去の学問や文化を若い世代が継承し、未来を託さなければならない若い世代が人格の形成や自らの意志によって未来社会を形成する力をみにつけるといった視点は感じ取れない。

Society 5.0の特徴を上げると、IoT(あらゆるものをインタネットに接続する)で集めた情報をBigdata化し、その情報をAI(人工知能)に分析させ、その結果を経済や政治に利用する。キャッシュレス、フィンテック(金融技術)、自動運転、ロボット化された社会、第四次産業革命社会。建設現場の機械の遠隔操作、遠隔操作による緊急医療、工場での産業用ロボットの制御(スマート工場)、動画の体験授業(ギガスクール)、自動車の自動運転(スマートハイウエイ)、スマート農業、テレワーク、スマートシティーなど。現在の4Gに比べて超高速、超低遅延、大容量、多数同時接続ができる5G(第5世代移動通信システム)がそれらを可能にすると言われている。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を融合させた未来の社会システムで、超スピード化されたある意味で超便利な社会。しかし一方ではIoT,Bigdata,AIを使って個人情報の把握を通した超管理社会になる可能性も大きい。計画され制御された社会、効率的生産的で最適解の社会、完全にコントロールされた社会、組み込まれた予定調和な社会、これがAIを使って目指される文明なのかもしれない。しかし、それは自然としての生命の在り方とは異なる。

社会のエリート層・支配階級にとっては、そのような社会はユートピア(理想郷)かもしれない。だが、人間にとっては生命の喜びを失ったディストピア(暗黒郷)かもしれない。

 

3)「学びのSTEAM化」とは? https://miraii.jp/stem/3

ところで、GIGAスクールを先取りしている「未来の教室」とは、AI(人工知能)や動画、オンライン会話等のデジタル技術を活用した教育技法であるEdTech(エドテック)を活用し、人の創造性や課題解決力を育み、個別最適化された新しい教育を作り上げようとするプロジェクトとされているが、果たしてそうなのだろうか。

 

「未来の教室」プロジェクトは、①「学びのSTEAM化」、②「学びの自立化・個別最適化」、③「新しい学習基盤づくり」の3本の柱から構成されている。ここでは「学びのSTEAM化」を取り上げる。

「SREAM化」とは、Science(/科学)、Technology(/技術)、Engineering(/工学)、Art(/芸術)、Mathematics(/数学)の5つの頭文字をとった造語とされている。

 

 

IT技術の発展や様々なコトやモノが世界規模で動き影響しあうグローバル化に対応し、AI(人工知能)やIoT(あらゆるものをインタネットに接続)が急速に発達する現代社会で生き抜く力を身につけ、必要とされる人材を育成することが、STEAM教育の目的のようだ。未来を生きる子どもたちに必要な学びは、プログラミングによって動くAIやロボットが不得手としている、クリエイティブな能力や、チャレンジ能力を育てられる学びであると位置づけ、そのような能力を持つ人材の育成が最も重視されている。

 

ではこのSTEAM教育は妥当なのだろうか。STEAM教育は米国が発祥地で、すでに米国では実施されているのだが、ハーバード大学名誉教授で生物学・昆虫学の世界的権威のエドワード・O・ウイルソン氏は、STEAM教育を次のように批判していて興味深い。

「『生物学者になりなさい。しかし生物学者になりたいんだったら、その前にその基礎になる化学について学ぶ必要がある。そして化学を学ぶのであれば、その前に化学の基礎になる物理学に就て学ぶ必要がある。そしてサイエンスやエンジニアリングの世界では数学的な言葉が使われているので、数学についてもかなり学ぶ必要がある』という風に言うんですね。それらの基礎を学んでから、生物学に入っていくんだと。しかし、それらは間違っている。全く逆なんです。」

 

なぜなら、10歳から18歳くらいまでの若者は様々な問題や好奇心に駆られ、興奮して、好きだから行動するようになる。「自然世界に対して興味と好奇心と情熱が自然に沸き起こってきたら、あとは簡単」だと。まさに学習と教育の本質をついているように思える。まずICT(情報通信技術)ありき、ICT中心の教育は、若者の身体が本源的に持っている自然の不思議に対する好奇心をそいでしまわないか。この好奇心による学習こそが知的興味を発展させ、第三者による教育によって一層の知的好奇心を発展させる得るのではないだろうか。

 

第二次大戦後の急激な工業化による高度経済成長をもたらした教育が、工場労働に必要な労働力人間を育成することにその目的があったと同様に、STEAM化教育は、若い世代をグローバル競争とSociety0.5に対応できる人材(労働力)に育成すること、そのような労働力を資本(企業)のための戦力になるよう育成することが、その主要な目的になっているようだ。従って学習履歴をビッグデータ化し、それをAIが分析し、生徒を分類し、個別選別、序列化する、それが「個別・最適化された学習」の内実なのではないだろうか。

 

4)ICT(情報通信技術)の活用と学力の相関関係は?

ところでICT(情報通信技術)の活用と学力はどのような相関関係にあるのだろうか。

「教育のICT化で見ると授業環境の先進度(電子黒板やプロジェクターなどの整備率)で一位を取ったのは佐賀県の87.1%、最下位は秋田県の17.3%でした。佐賀県は教育ICT化の先進県として有名で、例えばデジタル教科書の整備状況は全国第一でほぼ100%です。ところが昨年の全国学力調査で秋田県は、県別ランク首位の正答率69.33%となった一方、佐賀県は62.33%で43位でした。デジタル教科書や電子黒板の導入が学力向上につながっているのか、疑問を感じさせる結果です。」(「世界」2020年5月号p175)

 

また「韓国のデジタル教科書の導入後の調査を見てもデジタル教科書が学生の興味を引くことはあっても、デジタル教科書の導入が学力を向上させるという確かなデータはないようです」「児童が十分な思考をせずに、マルチメディアの刺激に対して反応するような学習活動は自分で考える力を低下させる」(同上)という意見もあったようだ。

 

自分で得た情報を自分の頭で整理、分析、考察し、関連づける明確な思考を身に着けることは学習と教育の本質的な事柄の一つだろう。アメリカのシリコンバレーのラボのVTRを見ていて興味深いことの一つは、研究発表者がパワーポイントを使わずに、模造紙にマジックで自分の考えを書きながら討論していることだ。話し書き進む過程は、話者にとっても聞き手にとっても思考の回路を明確にしていく過程に集中することであり、思考をクリアにする積極的な共同作業でもある。。思いがけない独創的ひらめきが起こるかもしれない。

 

それに対して、パワーポイントの画面は次々に切り替わっていくので、思考は細切れになり、思考はクリアになれず、印象だけが連続的に残っては消えていく。そこでは話者以外は「観客」になってしまっている。デジタルな教科書や教材は、感覚的なヴィジョンを共有する場合は有効だろうが、思考を深め明瞭にするには適していないのではないだろうか。読解力や論理的思考力を体得するためには、情報を自分の頭で整理、分析、考察し、関連づけ、要点を整理し、文章化し、発表することが最も重要ではないだろうか。

 

5)人間が情報技術の奴隷になる?

ICT(情報通信技術)を全面否定しているのではない。テクノロジー中心の考えを批判しているのだ。ICT(情報通信技術)の導入は不可欠である。だがそれは教育の中心に置かれるべきではなく補助手段ではないのだろうか。人間が情報技術の奴隷になってはならないと同様に、学習や教育もICT(情報通信技術)の奴隷になってはならない。ICT(情報通信技術)の奴隷になることは、ICTを支配する資本の国際的競争に巻き込まれ、知らぬ間に精神的にも資本や国家の奴隷になってしまっている若者を見ることになるだろう。

 

工業化社会の終焉と情報化社会の到来は、従来、先生や教師が主要に行ってきた知識の伝達者という役割を変化させているようだ。知識の伝達者から知識と情報の編集者、コーディネイター的役割が期待されているように思われる。知識と情報だけならインターネット上に五万とあるのだから。

対面での先生や教師の情熱のるつぼが伝播して巻き込んだ時、生徒達を動かす。これが教育の核心だと思う。そういう意味では、様々なニーズ(障害児、遠距離児、不登校児を含む)に対応できるようなオルタナティブ教育が、独創的なフリースクールが雨後のタケノコのように生まれてよいと思う。それらを国家が公認し、税金を投入すればよい。

 

6)5G電磁波の被曝でどうなる?

総務省は、「教育現場の課題解決に向けたローカル5Gの活用モデル構築」として令和元年度補正予算2.4億円を計上した。「ローカル5G基地局を設置することで教育現場における5G利用環境を構築し、5Gの特性(超高速、超低遅延、多数同時接続)を活かした活用モデルの構築(実証)を行う。」GIGAスクール構想や「未来の教室」プロジェクトでは5G(第5世代移動通信システム)導入が前提になっているようだ。

 

太陽光線、紫外線、赤外線など自然の電磁波に対しては、人類を含む微生物、植物、動物などの生物は、進化の過程で対応してきた。 だが、高圧線、電線、家庭電化製品から出る低周波電磁波、携帯塔、スマートフォン、携帯電話、Wi-Fi等から出る高周波電磁波は人工の電磁波であって、気が付かないうちに生命体にダメージを与えている。ダメージを強く受けた人には、睡眠障害、頭痛、倦怠感、どうき、筋肉の痛み、うつ、耳鳴り、物忘れ、めまいなどなどが出る。いわゆる「電磁波過敏症」である。僕自身20年来の「電磁波過敏症」に悩まされてきた。https://www.cultural-wisdom.com/5g (5Gと電磁波被曝)    

 

 

 

「電磁波に被曝すると、酸化ストレス、DNA損傷、免疫異常、自律神経系の異常、ホルモンの異常、心臓血管系の障害、認識機能の異常などが発生し、神経側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患や、脳腫瘍などのがん、流産の増加、精子数の減少など生殖機能障害につながると指摘されている。」(電磁波からいのちを守る全国ネット、2019年1月30日、加藤やすこ)

 

特に子どもの頭蓋骨や皮膚は大人より薄く、また、子どもの脳は水分が多く、電磁波を吸収しやすい特徴がある。従って、大人よりも電磁波の影響を強く受けてしまう。

 

「5Gが発するミリメーター波(MMW)も懸念材料になっている。なぜなら、この種のMMWはアメリカの国防総省が開発したもので、空港での危険物監視モニターに使われているのみならず、暴徒の鎮圧に際しても警察が使っている電子銃(ADS)そのものであるからだ。要は、もともと5Gは武器として開発が始まった技術なのである。実は、Wi-Fiも同様で、その起源は1950年代に遡る。秘密裡に開発が始まった電磁波兵器に欠かせないのがWi-Fiであった。」(浜田和幸「次世代通信技術5Gのもつ危険性に目をつむる日本政府(中)」https://www.data-max.co.jp/article/30923

 

7)STOP5G

GIGAスクール構想や「未来の教室」プロジェクトでは5G(第5世代移動通信システム)が導入され、5GやWi-Fi(無線LAN)が学校で使用され一人一台タブッレトを持つようになれば、常時強い電磁波を浴びることになるだろう。特に子供たちへの影響が心配だ。

ロシア政府は、18歳未満の子供がスマートフォンを使用することを禁止している。更にWi-Fi(無線LAN)との接続ではなく,有線接続のパソコン使用をすすめている。Wi-Fi(無線LAN)を使う場合は、Wi-Fiアクセスポイントから5m以上離れるよう求めている

(「COVID-19 期間中の教育で、無線周波数電磁波への被爆を抑えるために、ロシア政府が子供を守るための勧告を発表」)

ロシアはソ連時代、米国大使館に電磁波攻撃をかけていたためか、人工電磁波の恐ろしさを最もよく知っているからなのだろう。

 

欧米をはじめ5G導入に懸念を示し、導入停止や条例による禁止を決めている都市や地域、地方政府が世界で多く声を上げ始めている。

5Gを禁止した世界の都市、町、国のリスト (Stop5G Japan Networkのfacebookより)

https://www.facebook.com/103024201185003/posts/147684516718971/

日本は5GをSTOPする運動は遅れているが、水面下では人工電磁波の危険性、恐ろしさが浸透してきたようであり、GIGAスクール構想や「未来の教室」プロジェクトに対して情報公開を求め、市民の声を公然と大きくしていきたいものだ。特に子供たちへの電磁波被曝はSTOPさせたい。

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